昔あるところに、スメーダというたいそう金持ちの青年がいました。しかし彼は「お金は死んだらあの世へ持っていけない。私はあの世まで持っていけるものを手に入れたい」と考え、全財産を手放し家を出てしまったのです。
ある日スメーダは、ディーパンカラという仏さまの一行が、洪水で途切れた道を通ることを知りました。そこで土を手で盛って道を修復しようとしましたが、途中で一行がやって来てしまいます。
とっさに彼は、結んでいた髪をほどきました。そして仏さまたちが泥に汚れないよう髪の毛を道に敷きつめ、さらに自分の体を橋のように伸ばしてうつ伏せになると、目の前にこられた仏さまに申し上げました。
「どうか私の背中を踏んでお進み下さい。何よりも尊い仏さまのためなら、喜んで橋になります」
一瞬の内にすべてを見通された仏さまは、こう予言されました。
「この青年は、やがてシッダールタという名の仏になるであろう」
そうです。この心優しき青年こそ、後に生まれ変わって出現されたお釈迦さまだったのです。
|