ある山に何百匹もの猿が住んでおり、その中に一匹だけ生まれつき足の不自由な猿がいました。そして何をするにも一歩遅れるため、仲間からはいつも「足手まといだ」と怒られていたのです。それでもこの猿は、いつか皆の役に立ちたいと思っていました。
季節は秋から冬へ移り、山には食べ物が無くなりました。そこで猿たちは仕方なく村に降り、民家の柿の実や野菜などを取って食べだしたのです。すると困った村人たちは罠を仕掛け、大勢の猿たちがそれに捕まってしまいました。
その時、足の不自由な猿が遅れてやって来ました。そして仲間が村人たちに捕まっているのを見て何とか助けようと思い、ある家に火を付けたのです。村人たちは火を消すため一斉に走り出し、その間に猿たちは罠を抜け出して山へ逃げることができました。ただし足の不自由な猿だけは、火を消し終わった村人に捕まり、村人たちの怒りをかって棒でメッタ打ちにされてしまったのです。
しかし足の不自由な猿は、やっと仲間の役に立つことができ、満足そうに微笑んで息絶えました。
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