一般社会とお坊さん社会、現実にはどちらが楽でどちらが大変か、という話に時々なる。

　サラリーマンは気楽な稼業、とは昔の唄の話で、低賃金・サービス残業は当たり前。定年の引き下げに、医療保険や介護制度、それに年金制度への不安。

　その点、定年は無いし死なない人はいないから、お坊さんは食いっぱぐれが無いだろう。いやいや、核家族化や価値観の多様化、それに情報化社会の影響で宗教から遠ざかる人が増え、僧侶を介さない直葬も見られるようになった。いや、そもそも葬式坊主なんていらない！等々……。

　多種多様な職種や仕事内容、さらに環境や個性も加味しようとすれば、単純に比較などはできない。しかし、伝統と格式の上にあぐらをかき、自分の至らなさや弱さから目を背け、そのことを隠すかのように名誉を求め続けることもできる。そんな境遇にいるお坊さんも多い。

　家族の生活のために、自分が良いと思わない商品でも「これは良いものですよ」と偽って売らなくてよい。相手のために、自信を持って最高だと思えるものだけを、自分の利益を考えずに差し出してよい。お坊さんとは、それほど富める者であるはずなのだが……。