lotus column 得度 by Shume
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「三界の中に流転(るてん)し、恩愛断ずること能(あた)わず。恩を棄て無為(むい)に入るは、真実の報恩なり」

 先日、長男が得度(とくど)した。かぞえの九歳で早いかもしれないが、「是(これ)時なり」と思ったのだ。長男が六歳の六月六日にお経のお稽古始めをしていただいたお師匠さまの、お弟子に加えていただいた。

 得度授戒式は、御会式(おえしき)に引き続き執り行われた。小二の長男は二学期になって、運動会や学習発表会の劇の練習と忙しそうである。そこで本人の負担を軽くするため、動きとセリフ?を書き込んだ、得度式の台本を作ってみた。晴れの門出である。失敗は無いがやり直しは効かないのだ。長男がつまずきを感じないようにと、その台本を作りながら泣いた。

 前掲の文は辞親偈(じしんげ)といって、「親子の縁を切り仏門に入ることが、恩に報いる本当の姿である」という意味だ。出家とはこういうものなのだと、あらためて感じた。

「仏弟子は必ず四恩を知って知恩報恩をほうずべし」

 お祖師さまのお言葉である。四恩とは、三宝、国主、一切衆生、そして父母の恩のこと。恩を感じ、恩を知って、報じなければならない自分に気付き、行じていくのが出家である。

 入行前に「お祖師さま、尊神さまは大事やけど、ご両親も大事やでぇ」と、長男のお師匠さまよりお言葉をいただいた。私が妻子を置いて挑んだ三度目の壱百日加行でやっと気付いたこと。百五十余名の修行僧と共に読経しているにもかかわらず、身に迫り感じる孤独感。今、生きて妙法に値い奉る有り難さ。そして父母への恋慕の念。修行前には想像もつかない心境だった。

 得度式は喜びと感涙のうちに終わった。長男は自らの唱えた一言一言の重みに、いずれ気が付くことだろう。その晴れやかな声のように伸びていって欲しい。

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