数人の人が背中を向けてばらばらに座っている。数メートル離た所にいる人が、その内の一人を選んで話しかける。話しかけられたと感じた人は手をあげる。
これは演出家・竹内敏晴氏の「話かけのレッスン」である。初めの段階で、話しかけられたと感じて手をあげる人は滅多にいないそうだ。
ただの号令や独り言のように、話し手のまわりで声が止まっている場合。あるいは「ずっと手前で声が落ちた」「頭の上の方で爆発した」「通り過ぎていった」「みんなに言ってるみたい」「誰にも言ってないみたい」といった具合。さらに「肩に怖々さわった」「背中に当たった」と感じたが、話しかけられたとは思わなかった人。
例えば大好きな人と待ち合わせをしていて、大勢の中から相手の姿を見つけ思わず声をかける時、何メートル離れていようとも、すぐ目の前にいる相手にとびつく様な心境だろう。そのとき空間はなくなり、ただ向かい合う自と他のみがある。
自分は普段、どのように話しかけているだろうか?さらにはお題目を唱える時、しっかり向き合っているだろうか?声が自分のまわりに止まっていたり、ただ大きな声をあてどもなく出してはいないだろうか?
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