子供たちがテレビゲームもせず、塾へも行かず、夕食時には家族全員がそろってちゃぶ台を囲み、その日の出来事などを報告し合う。そんな日常をつづるアニメ『サザエさん』は、テレビの視聴率が軒並み低迷するご時世にあっても高視聴率を維持しているという。

　オープニング映像は四季に応じて彩られ、それでいて本編は時が止まっているかのごとき平和な日常。そこに日本の家族の理想形を見ていたいという欲求を、大勢の人が持つためだろうか。

　それとも、日曜の夜に「サザエさん」を家族で観ていた団欒（だんらん）の記憶が原風景となり、時世代へ脈々と受け継がれ再現されているのだろうか。

　話は突然飛躍するが、私たちが憧憬（しょうけい）する風景、再現を求めて止まない共通の記憶とは、突きつめれば何か？　お釈迦さまによれば、この世界は始めからご自身のおられる浄土だという。ならば仏教に説く浄土こそ、私たちが心の奥底で共有する原風景と言えるのではないか。