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昨夜夢を見た。 ギラギラと照りつける太陽。真夏にはまだ間があるというのに、この暑さはどうだ。ほこりっぽい道の両側には、びっしりの人垣、彼らの目には、好奇･憎悪・驚嘆の光が満ちている。 彼はよろめきながら坂を下っていった。髪も鬚（ひげ）ものびほうだい、視線を落とし、背には石ころの詰（つ）まった袋、だが時々罵声を浴びせる人垣に向ってあげる顔には、恐ろしい程傲慢（ごうまん）な殺意がのぞく。 皆地獄に陥（おちい）るがいい。俺は正しい。あいつらを殺したんだって、現世で悪業（あくごう）を積まぬうちに殺してやったんだ。慈悲だ。今ならまだ地獄に行かずに済むだろう。地獄にさえ落ちなければ、正しい法を学べるし、そうなれば、正しく修行して……。救ってやったんだぞ。本当の慈悲というものだ。 一度に多数の人間を救うには、あれしか方法がないではないか。しかも建物を壊さないで済む。天才的な着想とはこういうものだ。安くあがるし、造るのも簡単だ。 俺は正しい。それが証拠に、俺の周りに集った者達を見るがいい。お前らとは大違いだ。きまじめだし、おとなしい。おまけに才能もある。視聴率を上げることしか頭にないマスコミの尻馬に乗る連中とは違うんだ。 そうだ、お前らにとっても理想的な人間だ、そうだろ。おとなしいだけに指導者が必要だ。俺がその指導者になるのは当然だ。彼らに世の中の現実というものをはっきりと示してやり、世間に容（い）れられなかったのを救ってやったのも俺だ。 仏法は正しい、それを悟った俺は釈迦の生まれかわりにして救世主、つまりキリストなんだぞ。また最高の予言者でもある。俺は正しい。その俺を罵（ののし）るとは憐（あわ）れな奴らめ。人殺しだと、誘拐犯だと、テロだと、その一言一言が悪因縁となることを知れ。 俺は正しい。内乱とはなんだ。乱れているのはお前らの方だ。金金金金、他人を欺（あざむ）いて金儲け、他人の足を引っぱって自分の出世を企む、そのために幼い頃から受験戦争、偏差値競争で仕込む、同じマインドコントロールするなら崇高な理念に向かうようにしてやる方がいいに決ってる。 俺は正しい。メロンを食って何が悪い。あれは金持ちの食うものだ。金持ちは悪人に決ってる。他人を騙（だま）したから金持ちになったに違いない。善人が金持ちになれるわけがない。その証拠に俺のおやじも貧乏だった。貧乏は嫌いだ、善人なんどクソクラエ。だからメロンを食ってやる。食って食って食いまくってやったんだ。これも慈悲だ。メロンも焼肉も俺に食われて成仏できるんだ。 俺は正しい。布施は最高の功徳（くどく）だ。金や土地や、その他あらゆる物にこだわるから悪業をなす。つまりは煩悩（ぼんのう）のなせる、というやつさ。このこだわりが煩悩なのだから、煩悩を無くすには、こだわる物が無ければいい。うむ、これは良い論法だ。冗遊に教えてやろう。だから布施をさせてやったんだ、何もかも。その金でメロンも食ったし、焼肉も食った、いいホテルにも泊った、ロールスロイスやベンツにも乗った、これから悪因縁を作りそうな奴を無事あの世に送り届けてもやった。お陰で、ホテルもベンツも成仏できたというもんだ。 |
小坊主のつぶやき
UFO通信
