自在生活ノススメ |紙芝居 by Shougyo

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 街角で紙芝居屋のおじさんの姿を見なくなって、もう随分永いような気がする。短く見積もっても、姿を見かけなくなって二十五年以上は経っているように思われる。薄い煎餅(せんべい)の上に乗せた酢昆布や水飴(みずあめ)などを十円〜二十円で買って紙芝居を見せてもらう。マンガの他に簡単なクイズなんかもあった。下町育ちの筆者にとって、ほのぼのとした思い出であると同時に、親の目を盗んで見に行くスリルも、紙芝居の思い出の隠し味になっていたように思う。

 大学三回生の時、その紙芝居を、当時所属していたサークルの、学園祭の演しものにした。題名は『龍の口』『至孝日朗(しこうにちろう)』『狼の牙』など。この題名を見てピンと来る人が居られたとしたら大したもので、これらはどれも高座説教で行われる『繰(く)り弁』の一節である。この繰り弁を、水彩画の名手であった高槻市円通寺の先代・井上龍温僧正(故人)が紙芝居に仕立てておられたので、これをお借りして学園祭での上演となったのである。

 上演する限りは本格的に?!筆者は学園祭を前に、荒川区日暮里にある駄菓子の問屋街を訪ねると、PTAのお母さん方が見れば飛び上がりそうな原色の水飴を仕入れ、それを短くて丈夫な割り箸の先に付けて学園祭の会場で配った。水飴は必ず割り箸二本に付ける。理由をご存じだろうか?そう!水飴は延ばしては丸め、延ばしては丸めを繰り返して飴の中に空気を入れ、その結果空気がたっぷり入って白くなった状態が最も美味しい。

 さて、水飴について一端(いっぱし)の蘊蓄(うんちく)を傾けてみたものの、実はこの学園祭で自分が紙芝居を演じる直前まで、筆者は水飴を白くして食べるということを知らなかったのである。それが上演の折り、「こうやって食べると、美味しいんだよね」と言いながら、水飴を真っ白なるまで練っていた三十過ぎのおじさんの声を聞き、様子を見て初めてこれを知ったというのが、偽らざるところなのである。

 話は変わって現在、日蓮宗大阪市宗務所では、法華経・日蓮聖人の教えを学ぶ公開講座『市民大学講座』を開催しているが、その中には少し突っ込んで大聖人の教義を学ぶ講座も設けられており、そこでは『日蓮聖人教学の基礎』(全四巻)なる本がテキストに使われている。一冊一冊は非常に軽便な体裁になっていながら、法華経・日蓮聖人の教義を学ぶ上での要点整理の書物としては、現時点では(筆者の知るかぎり)最高のものであろう。実はこの本を執筆された人こそ、私が学園祭で紙芝居を上演しようとしたとき、「こうやって食べると、美味しいんだよね」と言って、実際に生徒たちの前で真っ白な水飴を作ってみせた、立正大学の庵谷行亨(おおたにぎょうこう)教授その人なのである。

 日蓮聖人の教義の専門家として当代一流であると同時に、紙芝居が演じられるその前では、下町での懐かしい風景そのままに、自然に紙芝居の世界に入ることができる。そんな人の居る風景を、私は「法華の風景」と呼びたい。

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