のほほん評判記 |生きるヒントシリーズ by Chijo

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のほほん評判記

image 著者/五木寛之
発行/角川文庫
価格/各420円

 人はみな泣きながら生まれてくる。生まれ出たその日から確実に少しずつ近づいてくる「死」への恐怖ゆえなのか。

 大袈裟(おおげさ)だが目を引く本書のタイトルに関しては、この本が「人生論」や「思想」といった気負ったものではなく、あくまでタイトル通りの「ヒント」にすぎないことを著者は後書きでも述べている。歓(よろこ)ぶ・惑(まど)う・悲む……といった自分の感情や行為を12の章につづり、飾らない言葉で淡々と語られていくその内容には、決して押付けがましい高尚(こうしょう)な理論は無く、著者の等身大の人間像が浮き彫りにされていて誠に愛すべき一冊になっているのだ。加えて文庫本にしては異例ともいえる程文字が大きく、シリーズを通して実に読みやすい。

 「(美術)作品と対するのは、この世界でただひとりの自分です。自分には自分流の感じかたがあり、見かたがあります。(中略)自分の感性を信じつつ、なお一般的な知識や、他の人びとの声に耳をかたむける余裕、このきわどいバランスの上に私たちの感受性というものは成り立たねばなりません」

 著者が〈知る〉の章で述べている美術観賞に関する言葉だが、ここにも人の生き様に関するヒントが携(たずさわ)っている気がしてならない。

 泣きながら生まれてきた人間が、それでも自然や社会の目に見えない無数のいとなみの恩恵(おんけい)を受け、何十年にもわたって様々な重さや不安をはね返し生きてこの世に存在していること自体が、すでに驚くべき価値ある行為ではないか。本書には一貫して著者の自己肯定(こうてい)のエネルギーが脈打ち、人間賛歌とも言うべき言葉がちりばめられている。

「人間生きてるだけで儲(もう)けもんや」とは、テレビでおなじみのコメディアン・明石さんまさんがしばしば口にするセリフ。これ、素晴らしい言葉だとは思いませんか?

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