のほほん評判記 |
毎回このコーナーでは、あえて難しい仏教書やら長編小説などは紹介しないことにしている。そちらの方はお寺の蔵書や個人の好みにお任せするとして、ここでは若者からお年寄りまで、幅の広い年齢層に読んでもらえるような、やさしい本を選んでいるつもりだ。今回紹介する本は、まさに読み易さにおいては特筆モンである。なにせ一ページにつき一話完結のコラム集なのだから。 本書は東京新聞に『人の居る風景』と題して八年間連載された名コラムをまとめたもの。現在も毎週土曜日の夕刊に連載されているそうだ。読み易いとは言っても、これがなかなかどうして、一話一話にガンチクがある。ビールに例えれば「ノドごしスッキリ、コクがあるのにキレがある」というやつだ。読み進めていくと一ページごとにハッとする、ニヤッとする、ウーンとうなる…。深い。いや、「重い」言葉もある。読んでいくうちに「これは鏡だ」と思った。三面鏡どころじゃない。読む人の心を幾重にも映しとる全226話、226枚の鏡だ。 「自業自得」という言葉を聞いたことのある人は多いだろう。けれども大抵の場合、その言葉は自分に悪い事が起こった時に始めて出てくる。しかしその本来の意味は「良いことも悪いことも全部自分のせい」という、ごく身近な自然の法則であることを、どうかこの鏡を見て知ってほしい。 ちなみに著者の「僧多聞(そうたもん)」とはいわゆるペンネームなのだが、その正体は意外や意外、実は日蓮宗の有名なお坊さんなのだ。え?日蓮宗のお坊さんで有名人なんか知らない?コホン、まあそれはさておき……。一体どういう人なのかは、本を買ってからのお楽しみということで。 ※本書はお近くの書店、または下記まで直接ご注文下さい。 〒146-0082 東京都大田区池上1-31-1 水書房 |