のほほん評判記 |
日蓮聖人の御遺文を読んでいると、時々日本という国を指して「わずかの小国」あるいは「六十六箇国島二ツ」といった表現をされていることがあります。 確かに日本は島国ですので、わずかの島々なのですが、それは世界地図を俯瞰(ふかん)して認識できることであって、中世鎌倉時代に日本が島嶼国家(とうしょこっか=小さな島国)であるという感覚があったのだろうか、いつも不審に思っていました。 本書は、わずかの島々を龍が取り巻く、金沢文庫所蔵の一枚の古地図をテーマに、中世の国土観、つまり仏国土を経典から論考し、蒙古(もうこ)来襲のときの国土の守護神としての龍、そして地震を起こす地主神としての龍神信仰を、豊富な文献資料と図版を用いて探求した一冊。 中世のコスモロジーを、そして国土観をリアルに再現し、その時代に対する我々の認識を一変させてくれます。そして鎌倉時代当時、日本は地図上、わずかの島々として描かれていることを知ります。 今回もほとんど法華経に関係ない内容でしたが、本文中に二ヶ所ほど日蓮聖人の記述が出てきますので、ちょっと嬉しくなります。 |