のほほん評判記 |
本を読む行為ほど無駄なものはない。なぜなら読む端から内容を忘れてしまうし、日常生活で特に役立った記憶もない。いつか読み返したくなるかもしれないという強迫観念から、捨てることもできずどんどん増え続けていく。それでも読み続ける理由は、中毒だからである。おそらく活字という記号を解読することが、脳の活性化と気晴らしになっているのだと思う。たぶん。 本書の命題の一つに、脳が脳の事を考えて十全に理解できるか、というものがある。禅問答のように分かったような分からないような曖昧(あいまい)さが残るが、それはこの命題を考えているのも脳だからである。 脳の生理的な機能は少しずつ解明されつつあるが、こと心に関しては依然として深い闇の中にある。お経本をひらいて声に出して読むのは、しょせん脳の機能の一部だが、そうさせるものは心の存在である。宗教の本質はココにあると思うのだが、割と認識しやすい方へイメージに流される傾向がある。それは脳……心ほど不思議でとらえ所の無いものは無いからである。 脳について脳で考えるのは、予想以上に負担がかかるので、心身共に健康なとき以外はやめた方が無難である。類書に「唯脳論」がある。 |