のほほん評判記 |
以前にシルクロードの本を紹介したことがあります。ヘディンという探検家の記録でしたが、今回は某国営テレビの人気シリーズ「シルクロード」の取材に同行した著者が、三蔵法師の残した記録をもとに、その足跡を再現した歴史的読み物です。冒頭の地図を見ると、いわゆる西域と呼ばれる燉煌(とうこう)以西のアフガニスタンやインド全土にかけて、ほぼ全域を踏破されていることに驚きます。 本書の特色は、地図や写真などの図版が多いことです。ほぼ見開きごとに何らかの写真が掲載され、楽しく読み進めることができます。入竺求法の旅についてだけでなく、帰国後の、梵語(ぼんご)から漢文への翻訳の模様にも言及されていて、お経の成り立ちを知る上でも興味深い本です。 もっとも、今回の三蔵法師は『妙法蓮華経』を翻訳した鳩摩羅什三蔵(くまらじゅうさんぞう)ではなく、玄奘三蔵(げんじょうさんぞう)になります。 三蔵とは経・律・論の三蔵を修めた僧に与えられる称号ですが、中国では三蔵を翻訳する僧も広く三蔵と呼称したようです。玄奘の場合は十七年の求法の旅と、十九年に及ぶ翻訳事業で、膨大な量の経典や典籍を翻訳した功績があり、旅の記録である『大唐西域記』が西遊記のモデルになったため、ただ三蔵法師といえば玄奘を指すようになりました。 |