のほほん評判記 |偽書の精神史 by Kaijo

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のほほん評判記

image 著者/佐藤弘夫
発行/講談社選書メチエ
価格/1,680円

 偽書というと、「偽造されたもの」あるいは「捏造されたもの」といった怪しく胡散(うさん)臭いイメージがつきまといます。実際に学生の時に、卒業論文の担当の教授から、日蓮聖人の御遺文を引用する場合、昭和定本遺文の第一巻と第二巻を引くように指導された記憶があります。教授の説明によると、第三巻は偽撰の疑いのある御遺文が多数含まれるから、というものでした。

 現代では、著作についてオリジナルだとか改訂版であるとか、また著作権といった概念が存在しますが、閲覧と筆者が書物を入手する唯一の手段だった時代には無縁のものだったのでしょう。

 本書は鎌倉新仏教の祖師を中心に、中世に盛んにつくられた偽書について、それらが生み出される背景と課程を、豊富な事例を踏まえて論考した一冊。信仰が時として奇蹟譚を生み出すように、信仰体験や感得した境地を宗教的権威である高僧に仮託した時に偽書が生まれる、という一面は見逃せないでしょう。

 学生の時には偽撰の書について、宗祖の名を騙(かた)る不遜(ふそん)なもの、ととらえていましたが、別の見方をすれば、学術的には問題があっても、信仰が到達した一つの足跡としてとらえるべきだと、最近は考えています。


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