UFO通信 |久しぶりの大和路(1) by Ufo

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 先日、高校時代からの友人が久し振りに来阪した。翌日、三人で、もっと久し振りに奈良見物をした。今は東京在住であるが、奈良出身の彼にとっては珍しい所ではなく、関東出身の賢妻(けんさい)を案内しよう、ということになった次第。

 彼は関西へ来ることがあっても、拙僧(せっそう)にしか連絡を取らぬ。懐かしいはずの故郷にも、思い出したくないことがあるのだろう。それでも生家にだけは行ってみた。旧奈良市街の真ん中のこととて、若い商店主達の間に少しは新しい動きがあっても、家並はほとんど変らない。拙僧にとっても大変思い出深い所である。高校二年生からの十年程、よくお邪魔しては、オヤジさんから色々に教えられ、叱られもしたことを思い出す。

「お前等、外国のことばっかりして、日本のこと一つも知らんと」

 当時、彼はイギリス政治を専攻し、自分はフランス文学であった。二人は目と目で「そのうち日本に戻ってくるからエエよな」。果して彼はイギリス政治について数冊書いた後『江戸は夢か』を出版し、自分は縁あって僧侶になった。思春期から青年期にかけて、人生なるものが気になる頃、決定的な影響を及した人物の一人が彼のオヤジさんだったのだが、書けば切りがなくなるのでおくことにする。

 その後は東大寺へ回った。車ではあったが、拙僧お薦めの散策コースの一部を通って、戒壇院と大仏殿の間に車を置き、大仏殿・講堂趾・二月堂から三月堂、手向山八幡宮へ行ったのだが、二月堂からの眺めの変化には友人も驚いていた。

 奈良盆地北端の丘陵(きゅうりょう)部は別にして、その南にひろがっていた伸びやかで豊かな田園風景はもう無いに等しい。田園が荒れる原因は、何も戦争だけとは限らない。合法的、少くとも一見そうであるだけに止めようがない。「合法でありさえすれば」というようなやり方の短所が露呈(ろてい)している。

 ところで、二月堂といえば「修二会」=お水取りで有名な華厳宗(けごんしゅう)の修行である。拙僧も高校時代から何度か「おたいまつ」を見には行ったのだが、内容の一端を知ることができたのは近年のことである。

 華厳宗と言っても、華厳経だけを学するのではなく、他の学問も研究されていたことを知識としては知っていても、イメージとしては「宗」と「経」とが一対一で結びついている、というのが恐らく一般だろう。だが「修二会」の中で妙法蓮華経「提婆達多品(だいばだったほん)」が、しかも声明(しょうみょう)の形で唱えられていることを知った時には正直驚いた。落着いて考えてみれば、聖徳太子が「法華経義疏(ほけきょうぎしょ)」を書かれ、政治の中心思想として法華経精神をすえられたことから考えると、有り得ること、当り前のことなのに……である。

 我々は、つい今の自分の環境にとらわれ、物事の違いにばかり目が行ったり、固定観念から排他的になったりするが、法華経で「無限の空間・無限の時間」が本仏釈尊の宇宙であると説かれ、本仏釈尊の立場からは「娑婆即浄土(しゃばそくじょうど)」であると説かれていることから考えると、我々はできるだけ広い視野、できるだけ長い時間軸で物事を見、考えなければならないと思う。

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