いつそば「我聞の章」 |第14話「区別なき可能性」 by Shougyo
話

仏さまのこばなし

いつそば「我聞の章」

やさしい法華経物語

ウッキ〜くん

妙ちゃん

グリトラクータ童話

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 私の名は阿難(あなん)。今日もお釈迦さまが説かれた光と風の世界を旅している。

「外面は菩薩のごとくにして、内面は夜叉(やしゃ)のごとし」

 尊きお師匠さまであるお釈迦さまは、初めの頃にこうお説きになられた。現存する経典でいうと「華厳経(けごんきょう)」の一節。これを直接女性の人が聞いたなら、いくらお釈迦さまのお言葉とはいえ、心穏やかではいられないだろう……。

 心穏やかでないと言えば、思い出す人がいる。お師匠さまの従弟でありながら、師を亡き者にして教団の指導者になろうとした提婆達多(だいばだった)。彼は、仏教史上を代表する大悪人といえるだろう。しかしお師匠さまは、提婆達多のことを「彼こそ私が悟りを開くにあたっての恩人であり、自分を高めてくれる善知識(ぜんちしき)である」とおっしゃった。そして「遠い将来、提婆達多は天王如来という仏になる」と、成仏の保証まで授けられる。

 お師匠さまは「仏の心の中にも地獄の心があり、逆に地獄の心の中にも仏の心があり、互いに具(そな)わり合っている」と説かれた。お師匠さまも、提婆達多の悪逆によりご自身の地獄の心を具体的にご覧になることができたのだ。

 また、お師匠さまが入滅されて二千二百年余り後、お師匠さまから法華経を広める全権を託された上行菩薩(じょうぎょうぼさつ)さまもこうおっしゃったのを思い出す。

「今の世の中、人をよく成すものは味方よりも強敵の方だ」

 そしてお師匠さまは、ご自身のお言葉をくつがえすようなことを説かれた。「もちろん女性も仏に成れる」ということを……。

 お師匠さまは、浅い教えから深い教えへと、順を追ってお説き下さっていたのだ。初めは仏になることなど不可能だと説かれ、仮の悟りの位を示された。そしてその位に達する者は、男性の出家者に限るとまでおっしゃっていた。それが段々と深い教えへと説き進められ、今度は出家をしなくても、かなり高い悟りの位にまで昇ることができると明かされた。ただしその時点でも、男女共にお互いが修行の妨げとならないよう、女性が成仏するとはあえておっしゃらなかった。

 そしていよいよ最も深い最高の教え、お師匠さまご一代のご説法の、その結論として法華経が説かれた。そこで、はっきりと女性の成仏が明かされたのだ。初めから、法華経とは教えの全体だった。しかし、皆を残らず悟りの道へと引き入れるため、お師匠さまは教えの一部分だけを種々に説いてこられた。だからこそ、それらの教えでは、一部分の人しか悟りを得ることができない。

 根本となる全体の教えへと帰ることができれば、そこには悪人であるとか、女性であるとかいう区別など有りはしない。仏に成る、つまりこの世の極理を悟り、智恵と慈悲を持って他を導く者になれる可能性は、誰もが持っているのだ。

妙法蓮華経「提婆達多品第十二」より/つづく)

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