ある日、お釈迦(しゃか)さまの十大弟子の一人スブーティ(須菩提=しゅぼだい)は、お説法のためマガダ国の王舎城(おうしゃじょう)に呼ばれました。そして彼の説法を聞いたビンビサーラ王は大いに感激し、「ぜひあなたのために草庵(そうあん)を造って差し上げましょう」と約束されたのです。
しかしその頃のマガダ国はインド十六大国の中で最も強く、他の国々を併合しようとしていたので、草庵がもう少しで完成するというところで、王は忙しさにまぎれ屋根をふくのを忘れてしまいました。ところがスブーティは何も言わず、王の気持ちにただ感謝して、屋根のない草庵でずっと暮らしていたのです。
数ケ月がたちました。しかしその間、彼の徳に感じ入った天は一度も雨を降らせなかったのです。マガダ国の人々は日照りに苦しみ、作物は枯れはじめました。そして人々は、何とかしてほしいと王に訴えました。そこで王が役人たちに原因を調べさせると、雨が降らないのはスブーティの草庵に屋根がないからだとわかったのです。そこで王がすぐさま草庵の屋根をふくと、天はただちに雨を降らせ、人々は喜びの声を上げました。
そしてスブーティは屋根ができたことを素直に喜び、こんな詩をうたったのでした。
「私の庵(いおり)は完成し、風も通さず心地よい。天よ思うがままに雨を降らせよ」
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