ソーナ・コーリヴィーサは長者の子として生まれ、生まれてこの方一度も外を歩いたことがありませんでした。そのため足の裏に毛が生えており、それが有名になってビンビサーラ王の耳にまで聞こえたほどでした。
そこである日、王が八万の村長と共にブッダのもとへ説法を聞きに行くことになり、ソーナも同行できることになったのです。ブッダの説法に大変感激したソーナは弟子となり、ラージャガハ郊外のシータ林で熱心に修行を続けました。それは坐を組んで禅定(ぜんじょう)に入り、疲れると歩行するという繰り返しで、あまりの修行の厳しさに、彼の柔らかい足から血が飛び散るほどでした。
そこで彼は、こう思いました。
「ブッダの弟子で私ほど熱心に修行している者はないのに、どうしてまだ執着(しゅうちゃく)・煩悩(ぼんのう)の束縛(そくばく)から離れることができないのだろうか?」
このソーナの心のを知ったブッダは、彼にこうおっしゃったのです。
「ソーナよ。もし、おまえの琴(こと)の絃(げん)を強く張りすぎたら、良い音が出るだろうか?ゆるすぎたらどうだろうか?強くもゆるくもない時はどうだろうか?」
緩急(かんきゅう)ちょうど良い修行こそ最も効果があることを、ブッダはお説きになったのでした。
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