ブッダの弟子のマハー(偉大なる)・カッサパは、衣食住についての貪(むさぼ)りや、頭陀行(ずだぎょう)という執着を払う修行にかけては右出る者がなかったので、「頭陀第一」といわれていました。
彼は早くから貪りや怒りなどに満ちた在家の生活を嫌い、出家してから八日目に悟りを開いていました。
ある日のこと、ブッダが樹の下に座ろうとした時、それを見ていたカッサパは自分の着ていた大衣(だいえ)を脱ぎ、四つにたたんで座を設けました。その上に座られたブッダが、衣が柔らかで座り心地が良いことを告げると、カッサパはこう申し出ました。
「世尊よ、どうか私の布片の大衣をお受け下さい」
そうして自らは、ブッダが着古した粗末な糞掃衣(ふんぞうえ)を身に着け、以来カッサバはずっとその汚れた粗末な衣を着続けました。
その後、ブッダが祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)に滞在されている時のこと、カッサパが説法を聞こうブッダに近づくと、その場に居合わせた修行僧たちがカッサパを軽べつしたのです。
これを知ったブッダは説法を中断して「よく来た、カッサパよ」と申され、自分の座を半分あけてカッサパに座らせました。すでに悟りを開いたカッサパは、ブッダに等しい境地に達した者だということを、こうして皆にお示しになられたのです。
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