昔々、ある国のお妃(きさき)さまが重い病気にかかりました。そこで病気がなかなか治らないのを心配した王さまは、国中の偉い祈祷師(きとうし)を呼んで治療法を尋ねたのです。すると祈祷師たちはこう告げました。
「多くの神々への貢(みつ)ぎ物を怠(おこた)っているからです。毛の色の違う百種の獣(けもの)と、一人の子供をいけにえに捧げて祈らねばなりません」
そして王さまが言われた通りにしようとした時、お釈迦さまが通りかかってそのことをお聞きになると、こうおっしゃたのです。
「つまらぬことだ。米を得るには種をまかねばならない。長生きしようと思うなら、いつも和やかな気持ちで、人に慈(いつく)しみをもって接しなければならない。智恵を得ようとする者は、学問をしなければならない。誰もが、やったことにふさわしい結果を得るのだ。
欲望のままに勝手な生活をすると善い結果は出ない。一人の生命を助けるため、多くの生き物を殺して神々に捧げる代わりに、他人に情けを施すことが大事である」
これを聞いて王さまは自分の過ちに気づき、お妃さまの病気も次第に回復していきました。
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