ある日のことモッガラーナは、亡くなった母親が餓鬼(がき)の世界へ堕(お)ちて、空腹に苦しんでいるのを知りました。さっそく神通力を使って食べ物を送るのですがすぐに燃えてしまい、火を消そうと水を降らせても油に変わって、炎に包まれた母親は悲鳴を上げました。
そこでお釈迦さまは、なげき悲しむ彼にこう告げられたのです。
「お前の母親は、死ぬまで一度も他人に物を分け与えたり、良いことを教えることが無かった報いを受けている。因果の法則は神通力でも曲げることはできないのだ」
彼は気づきました。自分も他の餓鬼には目もくれず、母親だけを救おうとしていたことに……。
「モッガラーナよ。間もなく修行を終えた聖僧(せいそう)たちが森からやってくる。お前が彼らに食べ物や飲み物を供養するのだ。その功徳(くどく)がきっと母親へも向かうであろう」
彼は涙を流してお釈迦さまにお礼を述べると、教え通りたくさんの供養を用意し、修行僧たちに捧げました。そしてもう一度恐る恐る母親の行方を念じると、そこには昔の面影どおり、優しい微笑みを浮かべた母の姿がありました。
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