仏さまのこばなし |貧女の一灯 by Chijo
話

仏さまのこばなし

いつそば「我聞の章」

やさしい法華経物語

ウッキ〜くん

妙ちゃん

グリトラクータ童話

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 昔々インドのある町へ、お釈迦さまがお説法に来られることになりました。そこで町の人々は、お釈迦さまの徳を讃(たた)えるために、我も我もと油を買い求め、競って大きな火を灯(とも)しました。

 ところが、町で一番貧しい一人の老婆だけは、油を買うお金も無く途方に暮れていました。そこで、自分の髪をバッサリと切り落として油屋に持っていったのです。

「ほんの少しで結構です。どうかこの髪の毛で油を分けて下さい」
「そんな白髪混じりの髪の毛じゃ、一滴分の価値も無いよ」
「そこを何とかお願いします。たとえ何万回生まれ変わろうとも、ブッダ(悟りを開いた聖者)にはめったに出会うことができないと伝え聞きます。私も、お釈迦さまのために灯火(ともしび)を供養させていただきたいのです」
「そうか。お釈迦さまへの供養なら、今日だけ特別に油を分けてやろう」

 老婆は大喜びして何度もお礼を言うと、手に入れたわずかな油を小さな皿に移し、あまり目立たない道の隅っこに置いて火を灯しました。しかし、あたりは夜になったというのに、たくさんの大きな火で昼間のように明るく、老婆の灯した小さな火など、かすんで見えないほどでした。

 やがて、お釈迦さまとお弟子たちが、町に近づいてこられたその時です。突然に台風のような風が吹き荒れたかと思うと、無数にあった灯火は一斉に消し飛び、町は暗闇に包まれてしまったのです。

 そして、人々があわてふためいている中、お釈迦さまとお弟子たちは、静かに町へとたどり着かれました。暗闇にたった一つだけ光り続ける、老婆のほのかな灯火を目印に……。

 お弟子の一人が、お釈迦さまに尋ねました。

「世尊(せそん)よ。あれほどの激しい風が吹き、町中の大きな灯火が一斉に消えてしまったにもかかわらず、なぜこの小さな火だけは消えなかったのでしょうか?」

 するとお釈迦さまは、こうお答えになったのです。

「見栄(みえ)や執着は、自身をまぶしく照らし出すこともあるが、一瞬でくじかれ消えてしまう弱さと共にある。一方、会い難き仏と法の価値を知り、その恩に素直に報(むく)いようとする者には、永遠に消えることのない生命の明かりが宿り、正しき道を照らすものなのだ」

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