昔々インドのハラナイ国に、鹿のアクシス王が率いる鹿たちが平和に暮らしていました。
ところがある時、人間の国王の命令で鹿狩りが始まったのです。そこでアクシス王は、このままでは群れが全滅してしまうと考え、国王に哀れみを請(こ)うため会いに行きました。しかし聞き入れてはもらえず、やむなく毎日一頭づつ鹿を献上(けんじょう)すると約束したのです。
それからというもの、鹿たちは悲しみながらも毎日クジ引きで城に向かう者を決めました。そしてある日のこと、身ごもったメス鹿がクジで選ばれたため、子供が産まれるまで順番を延期してほしいと、泣いてアクシス王に頼んだのです。そこで王は、自ら身代わりになって城へ向かいました。
その経緯を聞いた国王は、自分の行いを大いに恥じました。
「なんと素晴らしい心なのか。私は人間の王などと称しながら、心は畜生(ちくしょう)そのもの。あなたは身こそ畜生と呼ばれながら、その心には真実がある」
そうして国王は、アクシス王に心から感謝し、二度と鹿狩りをしないと約束したのです。
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