王様の自慢はまっ白な象。王様がその白象に乗って街の中を歩くと、街の人々は口々にその姿をほめ称えました。しかし、みんな象のことはほめても、王様をほめる者は一人もいなかったのです。
「象のせいで恥をかいている。崖に連れて行って殺してしまおう」
王様は象にまたがると、山の険しい崖までやって来て象使いに言いました。
「ここから象を空中に立たせてみろ。命令だ。崖から足を踏み出して、空中に立たせるのだ。それができなければ、おまえは死刑だ」
今まで象使いは、王様に喜んでもらうことだけ考えて尽くしてきたのに、その考えは大きな間違いだったと気づきました。そして、白象に向かって命令したのです。
「さぁ、崖から足を踏み出すのだ」
白象は大きな鼻を振り上げながら、一歩を踏み出しました。次の瞬間、王様は目を大きく見開いて息をのみました。白象は一歩一歩、階段を登るように空中へ浮かび上がっていったのです。
王様と象使いが見続ける中、その姿は雲の中へと消え、再び戻って来ることはありませんでした。
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