七福神の一人に数えられる布袋(ほてい)さんは、もともと中国の宋(そう)の時代に実在した和尚さんでした。その生き方は天衣無縫(てんいむほう)、いつも大きな杖に大きな袋をさげて町をぶらついていたといいます。
お腹が空けば施しを受け、眠くなれば人の家の軒先で横になる。そして、出会った人にニコニコしながら「お前さんの顔は吉相だ。きっといいことがあるぞ」といって、相手を喜ばせることが大好きでした。
また、その占いが不思議と当ったため自然に人気者となり、誰が言うでもなく「布袋さん」と呼ばれるようになりました。
そんな布袋さんのことを、ただ者でないとでも思ったのでしょうか。ある日、偉い僧侶が問答をしかけました。しかし布袋さんは、相手の顔を見るなり手を合わせると、すぐに去っていきました。
なぜ布袋さんは、その僧侶と問答しなかったのでしょう。たぶん、相手を屈服させるためや、負けたと思われないための議論をしても、誰も幸せになれないと思ったからでしょう。
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