お釈迦さまのお弟子の一人が托鉢(たくはつ)に出ようとした時、お釈迦さまに呼び止められ「町に行って何か尋ねられても、教えのことだけ話してきなさい」と言われました。そして、こんな話をされたのです。
むかし、ある国の王さまが町中の盲目の人を集め、大きな象に触らせてみました。すると彼らは、鼻や尻尾・足・耳などの一部分だけをさわって、象の姿を思い浮かべたのです。
そこで王さまが、象とはどんな動物かを聞かれると、ある者は大蛇のようだと答え、ある者は細い縄(なわ)のようだと答え、またある者は大きな臼(うす)のようだと答えました。
こうして十人十色の答えが出ると、自分の答えこそ正しいと思い込んでいる彼らは、皆で言い争いケンカを始めてしまったのです。
「盲目の人たちは、象の一部分を知って全体を知らなかったために、言い争いをすることになった。これと同じで、少しの知識だけで何でも知っていると思い込んだ者が、世の中には大勢いる。そういう者たちと言い争ってはならないよ」
お釈迦さまは、そのお弟子をこのように諭(さと)されました。
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