はるか昔、林の奥深くに住んで座禅をして暮らす修行者がいましたが、彼は日頃よりシラミに悩まされていました。
そこである日、彼はシラミと約束を交わしました。
「私が座禅をしている時は、じっと静かにしてくれないか? かわりに、それ以外の時は私の身体を栄養にしてもよいから」
「それは私にとっても願ってもないことだ。必ず約束を守ろう」
それからというもの、彼はシラミに悩まされることなく、座禅に専念できるようになりました。
ある日のこと、一匹のノミがシラミのところへやって来ました。そしてシラミから修行者との約束の話を聞いたにもかかわらず、ノミはうらやましく思い、座禅をしている修行者の衣の中に跳び込みました。すると修行者はおもむろに胸をかきむしり、着ていた衣を脱ぎ捨て焼いてしまったため、ノミは命を失ってしまいました。
このシラミとはお釈迦さまで、シラミを妬んで命を落としたノミは、お釈迦さまを亡きものとしようとたくらんだ提婆達多(だいばだった)の前世の姿なのです。
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