いつそば「観心の章」 |
お釈迦さまは、インドのマガタ国の都・王舎城(おうしゃじょう)の東北にある霊鷲山(りょうじゅせん)という山で『無量義経(むりょうぎきょう)』を説かれました。そこには真理を求め、自らはさておいても他人のために尽くそうとするたくさんの菩薩を始め、天・龍・夜叉(やしゃ)といった私たちの眼に見えない霊界の衆生、修行を積んだお坊さまといった、あらゆる方々が集まっていました。
そして大荘厳菩薩(だいしょうごんぼさつ)という方が、たくさんの菩薩を代表して、お釈迦さまに「無上菩提(仏さまの智恵)をすぐに得たいなら、どのような修行をすればよろしいでしょうか?」と質問されました。 するとお釈迦さまは、次のようにお答えになるのです。 「それには一つ法門(教え)があり無量義という。無量義とは数限りない色々な善い行いが一つの心から出てくることであり、その一つの心こそ実相すなわち真理なのだ。この法門を修行する者は、必ずすぐに仏と同じ智恵を成就することができる」 そして「今までは一様でない相手の意欲に合わせて方便の力(真実の教えに導く方法)で数々の教えを説いてきたが、真実の教えを説き顕(あらわ)すことはしなかった」と明かされ、その身そのままで仏の智恵を得ることができる法門こそ、真実の教えであると示されました。 このように開経(かいきょう)と呼ばれる『無量義経』で前置きをされ、いよいよお釈迦さまは方便を用いずに、始めて自らの意思に従って『法華経』を説かれるのです。 |