いつそば「観心の章」 |
お釈迦さまは大勢の聴衆の前で、薬王菩薩と薬上菩薩の前世について語られました。
はるか遠い昔、雲雷音宿王華智仏(うんらいおんしゅくおうけちぶつ)という仏さまがおられた時、その国の王は外道を信仰していた妙荘厳王(みょうしょうごんのう)で、王妃は淨徳(じょうとく)夫人。そして、仏教を信仰し菩薩の修行をしていた二人の王子、淨蔵(じょうぞう)と淨眼(じょうげん)こそ、薬王菩薩と薬上菩薩の前世だったのです。 淨蔵と淨眼は、王が改心して正しい教えを信じて下さるよう、師の雲雷音宿王華智仏にお会い頂き、法華経の法会の席に着くことを勧めるため、このような話をしました。 「数千年に一度しか咲かない優曇波羅(うどんばら)の華を見ることが難しいように、また、片眼の不自由な亀が大海に浮かんでいる木片の穴を見つけて、うまくその中に首をつっこむことが極めて難しいように、仏さまに値い、真実の教えに遇うことは、実にまれなことなのです」 なぜ、仏さまや真実の教えとの出会いが容易でないのでしょうか。それは、私たち自身の心の問題で、自分中心の考えや思い上がりが、尊い巡り合いの縁を断ち切ってしまうからです。 仏さまに帰依(きえ)する心が深まるにつれ、出会いがますます尊く感じられてきます。縁の深さを感じ、大切にして生かしていけば、自然に自分の内外の環境が整備され、さらに仏さまの大きな慈悲に気づくはずです。 妙荘厳王も、そうして雲雷音宿王華智仏の説かれる法華経を聴聞し、王妃と共に菩提心(ぼだいしん)を発したのです。 |